耳元の防風林

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入社式の前日、知人から一対の豆型の耳飾りを貰った。
「強い木で出来ているから片耳にだけ付けなさい」
彼の言う通りにしてみた。懸念の通り、職場は溜息や愚痴や執念に荒れている。でもさほど気にならなかった。聞こえはするが、言葉が窓越しみたいに現実味を帯びないのだ。

数か月後のある日。

いっつも…やりして…変な耳飾り…お洒落する所だと…てない?あっちの…だったりね。

突然窓が割れて嘲笑が飛び込んだ。早退した私は涙声で知人に電話し、少し眠り、明け方、もう片方の耳飾りを手にした。その日出社すると、職場はやけに静かだった。昼休みは電子レンジの作動音しかしない。お局の△△さんに話しかけられたが、聞こえないので「聞こえないです」と返した。

それから5年。今私の両耳には花型の耳飾りがある。最近ボーナスを使って知人に2代目を作らせたのだ。初代よりも大きいからか、飾りが揺れるたびにそよ風を感じる。
その他
公開:25/04/03 12:20
更新:25/04/03 12:41

紅石紗良

よろしくお願いします!

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